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ニュースレター投稿日時2016.12.06 11:42

役自身になれるとき

ニュースレター5

 

 

 

↑ 久喜市職員の頃

 

金剛寺住職

澤田 照夫 様 

ニュースレター5 ②

 

 

 

 

 

 

 

駒沢大学で仏教を学び卒業後、久喜市に就職。36歳の時に金剛寺の住職となる。平成3年に演劇久喜座を設立。現在は演者でなく劇作と演出を中心に活動中。ジャンルは多様だが常に福祉と関連のある作品を心掛けている。平成26年度から宮代町社会福祉協議会の会長として地域福祉にも携わっている。

 

 

 

 

 

演劇は小学生の頃、杉戸町のお祭りで行われていたお神楽のストーリーを覚えてきて近所の子供たちと遊んでいた。中学では野球、高校では演劇、大学ではバイトと勉学、再び演劇とであったのは34、5歳の頃で、県内の劇団に所属しそこで演劇の基礎を学んだ。演劇久喜座を立ち上げたのは44歳の頃で、現在も活動している。演ずることはなかなか難しい。ただ、舞台の上で役として日常生活を送っているような感覚を獲得したときは、独特の快感である。ここ25年以上、劇作と演出に専念している。 

 

 

 

 

 

一方で現在、寺の住職であるが、そこで障害者の社会実習をお手伝いしている。障害がある方との出会いは、久喜市職員で福祉事務所に異動した30歳の頃であった。いままで関わったことがなかった脳性麻痺の方に出会い、大きなショックを受けたのを覚えている。その後生活保護ワーカーとして、精神障害者の退院を支援したり、薬物依存症患者と一緒に当事者グループの合宿に参加したり、病状調査のため精神科病院に行ったりとしてきた。今ではこのように何でもする市ワーカーはいなくなってしまったが、当時は色々な経験をすることができたし、この経験が今の取り組みに繋がっていると思う。ここで実習を受ける方たちは、体力のなさや社会性の課題、合理的な仕事の仕方が苦手など様々な課題を抱えている。だがその多くは、社会での経験が乏しいことや間違った習慣によって上手くいっていない。実際、彼らが仕事の段取りが分からずに戸惑うことはよくあることだが、それに対し具体的に指示することが最も大切で、それでも難しい場合は実際やってみせて覚えてもらうことにしている。また、何週間かしてお互いに慣れてくると、それぞれの特徴が見えてくる。金剛寺に実習に来る方は、大体がお人好しで、気弱で、自分に自信が持てていない。これを一掃することに特効薬は無い。ただただ、できる限りその方が不安であったり悩んでいそうな事柄へ気持ちに寄り添い、私なりの拙い助言をすることぐらいしかできない。想えば人間なんて結構「無力」な生き物だな、と思う瞬間でもある。

 

36歳から公務員と住職の2足のわらじを履いてやってきた。今思えばこの2つ役柄を上手に切り替えることはとても難しかった。60歳で久喜市を退職して、ようやく少し楽になるかと思いきや、この歳からの9年はあっと言う間に過ぎ去ってしまった。今も演劇家であり、住職であり、社会福祉協議会の会長としての忙しない日々であり、結局、役を演じ続けている。生きる限りこの生き方に終わりはないのだろうか。